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バンドネオンの閉じ弾き問題に就いて

外道です。

さて、クラシック音楽に真っ向から取り組むプロのバンドネオン奏者の方が、バンドネオンの閉じ弾きについて言及しておられるのを見つけました。

生水 敬一朗(しょうずけいいちろう)氏です。

補足です、バンドネオンの仕様に関して不十分な説明ではありますが、当サイトの過去 3つの記事をご一読ください。
バンドネオン? 何すかそれ
バンドネオンは、脳みそを4つに分割することを奏者に要求する。
バンドネオンのボタンレイアウトに就いて

ちなみに当サイトでは、

「引き」= 開き弾き
「押し」= 閉じ弾き
と扱うようにしております。


生水敬一朗 クラシカルバンドネオン奏者 – ややこしく面白い。
https://ameblo.jp/keibarletta/entry-12638000195.html

この生水 氏の記事はタンゴ業界のバンドネオン奏者にはまず書くことができない記事です。アルゼンチンタンゴにとって非常に都合が悪い意見だからです。

アマプロ問わずタンゴ業界のバンドネオン奏者にはスタッカートという伝統的な奏法があり、自身が受け継いだ楽器のほとんどに開き弾きが長年刻み込まれています。これはビンテージバンドネオンを手にする方ほぼ全員が直面することです。

ビンテージバンドネオンを所持した瞬間に音色が最強に強まった楽器が手に入るので愉快で最高ではありますが、メリットだけではありません。

練習を進めていくうちに「閉じ弾きをしてみたい」という自分の意志があっても、楽器がそれを許さないケースがあります。

楽器が奏者を支配する力はハッキリ言って絶大です。

開き弾きをするにあたって名器(機械なので名機と書きたい)であればなおさら抵抗は難しいです。練習を重ねて奏者と一体になってしまった場合、後からこれを変えることは容易ではありません。

「弘法筆を選ばず」言葉がありますが、達人は自分に合った道具(ここではバンドネオン)を慧眼で正しく判断して選んでいるはずです。


そもそも、以前のオーナーが開き弾きと閉じ弾きをバランスよく使用していれば、発音部であるリードの疲労度の差は生じにくいのですが、何十年も開き弾きばかりされていればご想像の通りです。

バンドネオンはアルゼンチンタンゴにより、開き弾きをするための楽器と成り果てたのです。ドイツで弾かれていた時代の物とは全く異なります。

この問題は非常に根深いです。しかも、100年前から続いている自然な流れなので誰も責められません。

また、現在の形のアルゼンチンタンゴが無ければバンドネオンはこの世から消滅していたものと思われます。私なんかはむしろアルゼンチンタンゴに感謝しなければなりません。


この、「世に存在するバンドネオン演奏が開き弾きが9割以上である件」は、アルゼンチンの中でも度々議題に上がります。毎回ちょっとしたケンカの原因になっています。おそらく何人か死んでるんじゃないですかね?

Klaus Gutjahr氏もおっしゃってましたが、開き弾き 9割というか95%です。残りの5%が閉じ弾き勢です。

こりゃもう、私の前回の記事の中の動画をご覧いただければ一目瞭然です。途中に休符があれば閉じ弾きする理由がないんだもの!

またですか? 33名のバンドネオンソロ祭り!

「開き弾き」あるいは「閉じ弾き」一方のみで演奏することは、
わかりやすく例えるとバイオリン奏者が弓を通常下げたり上げたりと交互に動かすところを、下または上だけで演奏するようなものです。
これらは本来一体でなければならないのです。

という意識で筆者はバンドネオンに取り組んでいるわけですが、
私のような雑魚キャラではなく、こうしたプロの立場の方がハッキリとおっしゃるならばすご~く説得力があるはずです。


おおっと、問題は解決していません。

「俺は自分の意志で閉じ弾きを試みている、しかし閉じ弾き時の音色がどうしても嫌なんだ」と楽器のせいにするなら、新品バンドネオンを買って己の手でバランスよく練習するしか道はありません。

ビンテージ楽器こそが元凶です。
あなたの新しい可能性を閉ざしているわけですから!

新品バンドネオンの購入方法については……..
ま、気が向いたら説明します。(うーん、我ながら外道!)


以上